Dev Guide / 2026 ・ No.06
n8n 入門と実践
仕組みと使いどころ、Web 開発での活用例、そして UiPath との比較
公開
「このデータを、あのシステムにも入れておいて」「毎朝この数字を集めてチャットに流して」。
開発の現場にも業務の現場にも、人の手で回している小さな作業がたくさんあります。
n8n は、そうした作業をノードを線でつなぐだけで自動化できるツールです。この記事では、n8n の歴史と仕組み、使いどころを整理し、
Web システム開発の例として「デプロイ後の受入チェック」を実際に作って動かします。最後に、RPA の代表である UiPath と比べ、
n8n で置き換えられるところと、UiPath に任せたほうがよいところを考えます。
n8n とは
n8n(エヌエイトエヌ)は、ワークフロー自動化のツールです。「Webhook を受けたら」「毎朝9時に」といったきっかけ(トリガー)から始めて、API を呼ぶ、データを変換する、条件で分ける、チャットに送る、といった部品(ノード)を画面上で線でつなぎ、一連の処理を自動で動かします。
名前は「nodemation」(node + automation)を縮めたもので、n と n のあいだに8文字あることから n8n。同じ種類のツールには Zapier や Make がありますが、n8n には次のような特徴があります。
- 自分のサーバーで動かせる(セルフホスト) ── Docker で起動でき、データを社外に出さずに済む。クラウド版もある
- コードも書ける ── 画面でつなぐだけでなく、JavaScript や Python のコードを1ノードとして混ぜられる。開発者が使いやすい
- 連携先が多い ── Slack、GitHub、GitLab、Jira、Google Sheets、PostgreSQL などのノードが標準で入っている。公式サイトの連携先一覧は2,000件を超える
- AI を組み込みやすい ── LLM を使う AI Agent ノードや、MCP(AI と外部ツールをつなぐ仕組み)にも対応
n8n は、「API でつながるもの同士を、開発者の手の届く形で自動化する」道具です。画面のボタンを押して回るロボット(いわゆる RPA)とは、得意な場所が違います。この違いは、後半の UiPath との比較で詳しく見ます。
歴史と変遷
n8n は、ベルリンの開発者ヤン・オーバーハウザー(Jan Oberhauser)が2019年に始めたプロジェクトです。個人の道具から、AI 時代の自動化基盤へと大きく育ちました。
| 年 | できごと |
|---|---|
| 2019年 | 6月に最初の版を npm で公開。10月に一般向けに発表し、11月に n8n GmbH を設立。ライセンスは Apache 2.0 に「Commons Clause」(ソフトそのものの転売を禁じる条項)を付けたもの |
| 2020〜21年 | シードで150万ドル(Sequoia ほか)、シリーズ A で1,200万ドルを調達。2021年の時点で連携先は200以上 |
| 2022年 | 独自の Sustainable Use License に移行。ソースは公開しつつ、n8n をそのまま他社向けのサービスとして売ることは制限する(いわゆる「フェアコード」) |
| 2023年 | バージョン 1.0。本番での利用に向けた安定版の区切り |
| 2024年 | AI へ大きく舵を切る。LangChain を使った AI ノードや AI Agent ノードを追加 |
| 2025年 | 3月にシリーズ B(5,500万ユーロ)、10月にシリーズ C(1億8,000万ドル、評価額25億ドル)。GitHub で1年に11万以上のスターを集め、JavaScript Rising Stars で1位。12月にバージョン 2.0 |
| 2026年 | 5月に SAP の出資が報じられ、評価額は約52億ドルとされる。10月10日時点の安定版は 2.42.6(ほぼ毎週、新しい版が出る) |
2.0 では、安全側に倒す変更が多く入りました。Code ノードの実行を別のプロセス(タスクランナー)に分ける、サーバーのコマンドを実行する Execute Command ノードを既定で無効にする、などです。また、ワークフローを保存しただけでは本番に反映されず、「Publish」して初めて切り替わるようになりました。直しかけの状態が本番で動いてしまう事故を防ぐためです。
仕組み:トリガー・ノード・アイテム
n8n のワークフローは、トリガー1つと、それにつながるノードでできています。ノードの間を流れるのは、JSON のアイテムの配列です。
ノードをつなぎ、アイテムを流す
3件のアイテムが HTTP Request ノードに入ると、API は3回呼ばれ、3件の結果が次へ流れます
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| ワークフロー | 自動化の単位。画面ではノードを線でつないだ図として見える。中身は JSON で、書き出し・取り込みができる |
| トリガー | ワークフローを始めるきっかけ。Webhook(外から HTTP で呼ばれる)、Schedule(定時)、フォーム、メールの受信、各サービスのイベントなど |
| ノード | 1つの処理。HTTP Request、IF、Code、各サービスのノード(Slack、PostgreSQL など) |
| アイテム | ノードの間を流れるデータの1件分(JSON)。多くのノードはアイテムの数だけ処理を繰り返す |
| 式(Expression) | {{ $json.url }} のように、前のノードのデータを設定値に埋め込む書き方。中は JavaScript |
| クレデンシャル | API キーやパスワードなどの接続情報。暗号化して保存され、ワークフローからは名前で参照する |
| 実行(Execution) | ワークフローを1回動かした記録。各ノードの入力と出力が残り、あとから確かめられる |
| データテーブル | n8n の中に持てる簡単な表。設定値やテストケースなど、ちょっとしたデータの置き場になる |
| Publish | 2.0 からの考え方。編集中の版と本番で動く版が分かれていて、Publish したときに本番が切り替わる |
処理の途中で失敗したときは、ノードごとに「止める」「エラーを次のノードに流して続ける」を選べます。ワークフロー全体の失敗は、別に用意したエラー用のワークフロー(Error Trigger)で拾って通知できます。
始め方とライセンス
クラウドか、セルフホストか
| n8n Cloud | セルフホスト | |
|---|---|---|
| 始めやすさ | 登録してすぐ(14日間の試用あり) | Docker などで自分で用意する |
| 料金 | Starter 月20ユーロ、Pro 月50ユーロ(年払いの場合)。Enterprise は見積もり | Community 版は無料。チーム向け機能は有料の Business(月667ユーロ・年払いの場合)か Enterprise |
| 数え方 | ワークフローの実行回数(ノードがいくつあっても1回) | Community 版は回数の上限なし(サーバーの性能しだい) |
| データの置き場所 | n8n 社のクラウド | 自社のサーバー |
| 運用 | n8n 社にお任せ | 更新・バックアップ・監視は自分たちで |
手元で試すだけなら、Docker で次のように起動し、ブラウザで http://localhost:5678 を開きます(公式の手順)。最初に管理者のアカウントを作れば使い始められます。
# データ(ワークフローや暗号化キー)を残すボリュームを作って起動 docker volume create n8n_data docker run -it --rm --name n8n -p 5678:5678 \ -e GENERIC_TIMEZONE="Asia/Tokyo" -e TZ="Asia/Tokyo" \ -e N8N_ENFORCE_SETTINGS_FILE_PERMISSIONS=true \ -v n8n_data:/home/node/.n8n \ n8nio/n8n:2.42.6
本番で使うなら、保存先を SQLite(標準)から PostgreSQL に変え、版を固定し(latest ではなく 2.42.6 のように)、暗号化キー(N8N_ENCRYPTION_KEY)をバックアップしておきましょう。Docker の使い方は開発ガイド No.5で紹介しています。
セルフホスト版のエディション
| エディション | 費用 | 主な違い |
|---|---|---|
| Community | 無料 | 機能のほとんどが使える。ただしワークフローやクレデンシャルの共有、プロジェクト、SSO、Git での版管理、環境の分離(開発/本番)、外部の秘密情報管理、ログの転送は入っていない |
| Registered Community | 無料(メールで登録) | フォルダ分け、過去の実行データを使ったデバッグ、実行へのメモ付けが加わる |
| Business | 有料 | SSO(SAML・LDAP)、Git での版管理、複数の環境、プロジェクトでの権限分け など |
| Enterprise | 見積もり | 外部の秘密情報管理、ログの転送、細かい権限、長いデータ保持、SLA つきのサポート など |
ライセンス(Sustainable Use License)で注意すること
n8n は「ソースは公開されているが、いわゆるオープンソースとは違う」ライセンスです。公式の FAQ の要点は次のとおりです。受託開発の会社は特に、顧客に渡すときの形を先に確認しておきましょう。
| できる(無料の Community 版で) | できない(商用ライセンスが必要) |
|---|---|
| 自社の業務を回すために使う。個人の学習や研究 | n8n をサービスとして提供し、顧客にワークフローを作らせる |
| 自社のインスタンスで顧客向けの自動化を作る(顧客が作ったり直したりできない形で) | 自社製品の中で、利用者が自分でワークフローを組めるようにする(独自の画面・API・AI 経由でも同じ) |
| ワークフローの構築・保守、研修、コンサルティングで料金をもらう | n8n を改造して自社の自動化製品として売る。ロゴを外して自社製品のように見せる |
| 自社製品の裏側で n8n を使い、利用者は出来上がった自動化を使うだけにする | ライセンスキーが必要な有料機能を、契約なしで使う |
判断の軸は「だれがワークフローの中身を決められるか」です。迷うケースは n8n 社([email protected])に確認するよう公式も案内しています。この記事は法的な助言ではありません。
主な活用シーン
| 分野 | 例 |
|---|---|
| システム間の連携 | 問い合わせフォームの内容を CRM に登録し、担当者にチャットで知らせる。受注データを会計システムに転記する |
| 通知・アラート | 監視ツールの警告を条件で振り分け、夜間は重大なものだけ電話・チャットへ |
| 定期レポート | 毎朝、DB と広告の管理画面の API から数字を集め、表にしてチャットへ |
| データの同期・整形 | スプレッドシートと DB の内容をそろえる。CSV を受け取って検証し、取り込む |
| 承認の流れ | フォームで申請 → チャットで承認ボタン → 承認されたら次のシステムへ。人の判断を待つ(Wait)ことができる |
| AI を使った処理 | 問い合わせメールを LLM で分類・要約して担当に振る。社内文書を検索して答えるチャット |
| 開発・運用 | CI と連携したテストや確認、障害時の課題の自動起票、リリースノートの下書き、依存ライブラリの更新チェック |
| 社内ツールの裏側 | Webhook を API として公開し、小さな社内ツールのバックエンドにする |
- 向いている ── API や DB で届く処理、イベントで動く処理、手順がはっきりした繰り返しの作業、エンジニアが近くにいるチーム
- 向いていない ── 画面しかないシステムの操作(RPA の領分)、ミリ秒単位の速さが要る処理や大量データの一括処理(専用のバッチやストリーム処理のほうがよい)、厳密なトランザクションが要る業務ロジックそのもの(アプリ側に書く)
実践:デプロイ後の受入チェックを自動化する
ここからは、Web システム開発の現場の例を一つ、実際に作って動かします。題材は開発ガイド No.5で使った顧客管理システム(Spring Boot + Vue + PostgreSQL)です。
よくある悩み
検証環境に新しい版をデプロイするたびに、担当者が確認表(Excel)を見ながら画面と API を手で確かめ、スクリーンショットを貼り、結果をチャットに書き、問題があれば課題を起票する ── という作業をしていないでしょうか。1回は短くても、デプロイのたびに発生し、見落としや記録漏れも起きます。
n8n で作る流れ
CI から呼ばれて、確認から起票まで
テストケースは n8n のデータテーブルに置くので、QA 担当者が1行足すだけで確認項目を増やせます
- CI(GitLab CI や GitHub Actions)が、検証環境へのデプロイのあとに n8n の Webhook を呼ぶ
- n8n がテストケース(URL・期待するステータス・含まれるべき文字列)を読み、画面と API を順に呼んで判定する
- DB にも読み取り専用のユーザーでつなぎ、マイグレーションの失敗がないか、マスタにデータがあるかを確かめる
- 結果をまとめてチャットに流し、不合格なら課題を自動で起票する
- CI には合否を HTTP のステータス(200/422)で返し、不合格ならパイプラインを止める
これは、人の代わりに画面のボタンを押して回る「狭い意味の RPA」ではなく、API と DB で確かめる自動化です。画面の見た目まで確かめたいときは、Playwright などの E2E テストや UiPath の Test Cloud を、この流れの一つのステップとして組み込めます。役割の分け方は後半で整理します。
作り方の要点
① テストケースをデータテーブルに置く
| case_no | title | method / url | 期待値 |
|---|---|---|---|
| AC-01 | 画面のトップが表示される | GET http://web/ | 200、<div id="app"> を含む |
| AC-02 | アプリが起動している | GET http://app:8080/actuator/health | 200、"UP" を含む |
| AC-03 | 顧客一覧を取得できる | GET http://web/api/customers | 200、「株式会社サンプル」を含む |
| AC-04 | 顧客を登録できる | POST http://web/api/customers | 200、登録した名前を含む |
② CI から Webhook を呼ぶ
Webhook ノードは、ヘッダーのトークンで認証する設定にし、「応答は Respond to Webhook ノードで返す」を選びます。CI 側は、たとえば GitLab CI ならこう書けます(例)。
# .gitlab-ci.yml(抜粋)
acceptance:
stage: verify
needs: [deploy_staging]
script:
- >
curl --fail-with-body -sS -X POST "$N8N_URL/webhook/acceptance"
-H "X-Api-Key: $N8N_TOKEN" -H "Content-Type: application/json"
-d "{\"env\":\"staging\",\"version\":\"$CI_COMMIT_TAG\",
\"commit\":\"$CI_COMMIT_SHORT_SHA\",\"pipeline\":\"$CI_PIPELINE_URL\"}"
③ HTTP Request ノードで呼ぶ
- Method は {{ $json.method }}、URL は {{ $json.url }} と、テストケースの値を式で入れる。4件のアイテムが入るので、4回呼ばれる
- Options の Include Response Headers and Status と Never Error をオンにする。404 や 500 でも止まらず、ステータスを次のノードで判定できる
- Settings の On Error を「続ける」にしておくと、接続できないときも判定に回せる
④ Code ノードで判定する
// テストケースと HTTP の結果を 1 件ずつ突き合わせる(抜粋)
const cases = $('受入テストケースを読む').all();
return $input.all().map((res, i) => {
const c = cases[i].json;
const status = res.json.statusCode;
const body = String(res.json.data ?? '');
const okStatus = status === c.expect_status;
const okText = !c.expect_text || body.includes(c.expect_text);
let detail = 'OK';
if (status === undefined) detail = '接続できない';
else if (!okStatus) detail = `ステータス ${status}(期待値 ${c.expect_status})`;
else if (!okText) detail = `期待した文字列がない:${c.expect_text}`;
return { json: { case_no: c.case_no, title: c.title, ok: okStatus && okText, status, detail } };
});
⑤ DB を確かめる
Postgres ノードで、SELECT しかできないユーザーを使って問い合わせます。マイグレーション(Flyway)の履歴と、マスタの件数を見ます。
SELECT (SELECT count(*) FROM flyway_schema_history WHERE NOT success) AS failed_migrations, (SELECT max(version) FROM flyway_schema_history WHERE success) AS schema_version, (SELECT count(*) FROM customer) AS customers;
⑥ まとめて、分けて、返す
もう一つの Code ノードで API と DB の結果を合わせ、通知の文面と課題の本文を作ります。IF ノードで「すべて合格」かを見て、合格ならチャットへ通知して CI に 200 を、不合格なら課題を起票し、チャットへ通知して CI に 422 を返します。課題の起票は GitLab・GitHub・Jira などのノードか、HTTP Request で各サービスの API を呼びます。
2.x では、ワークフローを直したら必ず Publish しましょう。保存しただけだと、Webhook は前に Publish した版のまま動きます(筆者も一度、直したつもりで古い版を動かしていました)。
動かした結果と効果
検証環境に版 1.0.1 を置いて呼ぶと、6項目すべて合格。次に、設定の誤りで API のパスがずれた版 1.0.2(確かめるために、わざと誤りを入れたもの)を置いて呼ぶと、3項目が不合格になり、課題が起票され、CI には 422 が返りました。
# CI から呼んだときの応答(1.0.2)
{"result":"failed","passed":3,"total":6,"issue":"https://gitlab.example.com/crm/-/issues/102"}
HTTP 422
# チャットに届いた文面
【受入チェック NG】staging v1.0.2(9d81e0c)3/6 件 合格
[OK] AC-01 画面のトップが表示される:OK
[NG] AC-02 アプリが起動している(ヘルスチェック):ステータス 404(期待値 200)
[NG] AC-03 顧客一覧を取得できる:ステータス 404(期待値 200)
[NG] AC-04 顧客を登録できる:ステータス 404(期待値 200)
[OK] DB-01 マイグレーションの失敗がない:失敗 0 件(適用済み V1)
[OK] DB-02 顧客マスタにデータがある:3 件
課題:https://gitlab.example.com/crm/-/issues/102
チャットと課題管理は、検証のために用意した受け口(モック)で受け取った内容です。実際の運用では Slack・Teams・GitLab などのノードや API に置き換えます。
何が変わるか
| 手作業のとき | n8n にしたあと | |
|---|---|---|
| 確認にかかる時間 | 1回 10〜30分ほど(項目の数しだい・目安) | 1秒かからない(今回の実測は 0.5〜0.7 秒) |
| 記録 | Excel とスクリーンショット | 実行履歴に各ノードの入出力が自動で残る |
| 通知と起票 | 人が書く。忘れることもある | 不合格のときに必ず起票・通知される |
| 不具合の流出 | 確認の前に次の作業が進むことがある | CI が止まるので、次の環境へ進まない |
| 項目の追加 | 確認表を直し、手順を共有する | データテーブルに1行足すだけ |
| だれが直せるか | 確認表を知っている人 | 開発者。テストケースは QA 担当も |
気をつけること
- テストデータが増える ── 登録のテストは毎回データを作る。テスト用とわかる名前にして、定期的に消すワークフローを用意する
- 権限は最小に ── DB は読み取り専用のユーザー、Webhook はトークン必須。検証環境だけを対象にし、本番には向けない
- テストの代わりではない ── 単体テストや E2E テストの代わりではなく、「デプロイが正しく済んだか」の確認。細かい仕様の検証はアプリのテストで
- n8n 自体も運用する ── 版の固定と更新、バックアップ、暗号化キーの保管。ほぼ毎週新しい版が出るので、更新の手順を決めておく
- チームで使うなら ── 無料の Community 版は、ワークフローやクレデンシャルを他のメンバーと共有できない。複数人で保守するなら有料版も検討する
RPA とは:UiPath と n8n の位置づけ
RPA(Robotic Process Automation)は、ソフトウェアのロボットが、人と同じように画面を操作して業務をこなす仕組みです。画面の項目を読み取り、クリックし、入力し、別のアプリに貼り付ける。相手のシステムに API がなくても、人が操作できる画面があれば自動化できるのが最大の特徴です。
ただ、「業務の自動化」の道具は RPA だけではありません。大まかに分けると次のようになります。
| 種類 | 主な製品 | 動かし方 | 得意なこと |
|---|---|---|---|
| RPA | UiPath、Power Automate(デスクトップフロー)、WinActor、BizRobo! | 画面の操作を記録・再現する | API のない画面、Windows のアプリ |
| ワークフロー自動化・iPaaS | n8n、Zapier、Make、Power Automate(クラウドフロー)、Workato | API と Webhook でつなぐ | SaaS・DB の連携、イベントで動く処理 |
| テスト自動化 | Playwright、Selenium、UiPath Test Cloud | コードやツールで画面を操作し、結果を検証 | リリース前の回帰テスト |
| 業務プロセス管理(BPM) | Camunda、UiPath Maestro など | 業務の流れを BPMN で描き、人とシステムをつなぐ | 承認や長く続く業務の管理 |
| AI エージェント | n8n の AI Agent、UiPath Agent Builder など | LLM が判断し、道具(API など)を使う | 形の決まらない入力の処理 |
自動化ツールの位置づけ(筆者の整理)
横は「何を相手にするか」、縦は「だれが作り、どう管理するか」。n8n と UiPath は、ほぼ対角にいます
UiPath とはどんな製品か
UiPath は、2005年にルーマニアのブカレストで DeskOver として創業し、2015年に UiPath に改名、2021年にニューヨーク証券取引所に上場した RPA の代表的な会社です。Gartner の RPA 部門の評価(Magic Quadrant)では、2025年まで7年続けて「リーダー」に選ばれています。いまは RPA だけでなく、AI エージェントまで含めた「エージェント型自動化のプラットフォーム」を掲げています。
| 構成要素 | 役割 |
|---|---|
| Studio | ロボットを作る開発ツール。画面の要素を指定して操作を組み立てる |
| Robot | 実際に動くロボット。人の PC で一緒に動く attended と、サーバーで無人で動く unattended |
| Orchestrator | ロボットの配置・スケジュール・キュー・資格情報・実行記録の管理 |
| Document Understanding | 請求書などの帳票を読み取り、項目を取り出す。人が確認する画面もある |
| Integration Service | API でつなぐためのコネクタ群。UiPath も API 連携はできる |
| Test Cloud | アプリのテスト自動化 |
| Maestro・Agent Builder | AI エージェント・ロボット・人を一つの業務の流れ(BPMN)で束ねる、エージェントを作る |
| Healing Agent | 画面が変わってロボットが止まったとき、要素の指定などを自動で直す・提案する |
料金は、個人や条件を満たす組織向けの無料の Community、月25ドルからの Basic(ロボット2台まで、データは欧州のリージョンのみ)、見積もりの Standard と Enterprise があり、ユーザーやロボットの数で費用が積み上がる形です(2026年10月時点の公式サイト)。
n8n で UiPath を置き換えられる領域
結論から言うと、相手に API か DB の接続口があり、作り手が開発者(または開発者が支えるチーム)なら、n8n で置き換えられる場面は多くあります。
| 領域 | n8n でできること | 条件・注意 |
|---|---|---|
| SaaS 同士の転記 | フォーム → CRM → チャット、スプレッドシート → DB など。画面を開かずに API で直接つなぐので速く、壊れにくい | 相手の API が使えること(プランによっては有料) |
| 社内システムのデータ処理 | DB に直接つないで集計・転記・チェック | DB への接続が許可されること。書き込みは慎重に |
| 通知・定期レポート | 定時やイベントで集めて、整えて、送る | ── |
| 承認・依頼の流れ | フォームやチャットで受けて、人の承認を待ち、次へ進める | 複雑で長い業務の流れは BPM の領域 |
| メール・ファイル・AI の処理 | メールを読んで LLM で分類・要約、PDF からテキストを抜く | 帳票を大量に高い精度で読むなら専用の製品が有利 |
| 開発・運用の自動化 | この記事の受入チェック、障害時の起票、CI の後処理 | ── |
| コストを抑えたい小〜中規模 | セルフホストの Community 版なら、実行回数に上限がない | サーバー代と運用の手間はかかる。チーム機能は有料 |
RPA で作られた自動化の中には、本当は API で済むのに、画面を操作しているものがよくあります。画面の変更で止まりやすく、保守の手間がかかります。こうした部分を n8n(API での連携)に移すと、速く、安定し、費用も下がることが多いです。
UiPath に分がある領域
一方で、次のような場面では、UiPath(またはエンタープライズ向けの RPA 製品)を n8n で置き換えるのは難しいか、割に合いません。
| 領域 | 理由 |
|---|---|
| 画面しかないシステム | API のない古い業務アプリ、SAP GUI、メインフレームの端末画面、Citrix などの仮想デスクトップ越しの画面。UiPath は画面の要素の指定や画像の認識で操作できる。n8n には画面を操作する公式のノードがなく、コミュニティのノードやコードで Playwright を動かす程度 |
| 人の PC で一緒に動く | 担当者がボタンを押すと、その人の画面でロボットが続きを操作する(attended)。n8n はサーバー側で動くので、この使い方はできない |
| 大量の帳票 | 請求書や申込書を読み取り、自信のない項目だけ人が確認する、という仕組みが製品としてそろっている |
| 全社規模の統制 | 数百台のロボットのスケジュールとキュー、権限、資格情報の金庫、監査のための記録。n8n も有料版で SSO・ログの転送・外部の秘密情報管理などを備えるが、RPA を全社で管理する仕組みの厚みは UiPath が上 |
| 画面の変更への強さ | 画面が変わったときに要素の指定を自動で直す Healing Agent などがある |
| 業務部門が作る体制 | 開発者でない人向けの作成ツール、学習コンテンツ(UiPath Academy)、認定資格、パートナー企業。現場主導の「市民開発」を全社で回す仕組みがある |
| デスクトップアプリのテスト | Windows のアプリや SAP のテストを、業務の自動化と同じ道具で書ける |
逆に言えば、「画面しかない」「人の PC の上で」「全社で数百のロボットを統制」のどれにも当てはまらないなら、n8n を有力な候補にしてよいと考えます。
選び方と組み合わせ方
二者択一にする必要はありません。API で届くところは n8n、画面しかないところは RPAと分け、つなぎ目を API にするのが現実的です。
n8n と UiPath を組み合わせる
n8n には UiPath 専用のノードはありませんが、HTTP Request ノードから Orchestrator の API を呼べます
選ぶときに確かめること
| 確かめること | n8n が合う | UiPath が合う |
|---|---|---|
| 相手のシステム | API・DB・Webhook がある | 画面しかない、Windows のアプリ、仮想デスクトップ |
| だれが作り、直すか | 開発者、または開発者が支えるチーム | 業務部門が中心(CoE などの推進組織つき) |
| 動く場所 | サーバー(クラウドでも社内でも) | 人の PC でも、サーバーでも |
| 統制・監査 | 小〜中規模、または有料版で足りる範囲 | 全社規模、厳しい監査の要件 |
| 費用の形 | 実行回数(クラウド)か、サーバー代と運用の手間(セルフホスト) | ユーザー・ロボットの数と追加機能 |
| データの置き場所 | セルフホストで社内に置ける | Standard 以上なら社内(セルフホスト)も選べる |
すでに UiPath を使っている会社なら、まず既存のロボットを棚卸しし、「API で済むもの」を n8n に移すところから始めると効果が見えやすいでしょう。これから自動化を始める開発チームなら、n8n で開発・運用の自動化から小さく始め、画面しかないシステムが出てきたときに RPA を検討する順番がおすすめです。
結 — 一枚まとめ
- n8n は、トリガーとノードをつなぎ、JSON のアイテムを流して処理を自動化するツール。2019年にベルリンで生まれ、2.0(2025年12月)で安全性と「Publish」の考え方が入った。
- セルフホストの Community 版は無料。ただしライセンスは Sustainable Use License で、顧客にワークフローを作らせる使い方はできない。共有や SSO などチーム向け機能は有料。
- Web 開発では、デプロイ後の受入チェックを CI から呼び、API・DB の確認、通知、起票、CI への合否まで1秒かからずに終えられた。
- API・DB で届く連携、通知、レポート、開発・運用の自動化は n8n で UiPath を置き換えられる。
- 画面しかないシステム、人の PC での操作、大量の帳票、全社規模の統制は UiPath に分がある。両者は API でつないで併用できる。
参考
- n8n Docs
- n8n Docs — Install with Docker
- n8n Docs — Compare editions
- n8n Docs — License FAQ(Sustainable Use License)
- n8n Docs — v2.0 breaking changes
- n8n Docs — Data tables
- n8n — Pricing
- Wikipedia — n8n
- UiPath — Pricing
- UiPath Docs — Unified Pricing: Licensing plan framework
- UiPath Docs — Maestro overview
- UiPath Docs — What is Healing Agent?
- UiPath Docs — Integration Service connectors
- Business Wire — UiPath Recognized as a Leader in the 2025 Gartner Magic Quadrant for RPA
- Wikipedia — UiPath
実践例は2026年10月10日に、n8n 2.42.6(セルフホスト、Docker)と、開発ガイド No.5 のサンプル(Spring Boot 4.1.1、Vue 3、nginx 1.30、PostgreSQL 18)で実際に動かしたものです。チャットと課題管理はモックで受け、URL(gitlab.example.com)は例です。版 1.0.2 の誤りは確認のためにわざと入れました。料金・エディション・ライセンス・資金調達などは2026年10月時点の公式サイトと報道によります。資金調達の金額は報道ベースです。
開発ガイド No.6 — n8n 入門と実践 / 2026.10