Food Notes / 2026 ・ No.02
はじめてのお寿司
定番ネタ図鑑と、おいしく食べるためのコツ
公開
職人がひと握りずつ仕上げる、ひと口の芸術。それがお寿司です。
でも、ネタの名前が分からない、どれから食べればいい?手で食べてもいいの?と、はじめてだと迷うことも多いはず。
この記事では、定番の寿司ネタを写真で紹介し、それぞれの味わいと魅力を解説したうえで、
食べる順番、醤油のつけ方、手と箸の使い方まで、イラストでやさしくまとめました。
この記事の楽しみ方
前半はネタ図鑑です。マグロ、サーモン、白身、光り物、貝、ウニ・イクラなど、グループごとに写真を見ながら、味わいの違いを紹介します。後半は食べ方。食べる順番の目安、醤油のつけ方、手と箸のどちらで食べるかを、イラストで説明します。
まずは、お寿司屋さんでよく聞く言葉を覚えておきましょう。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| シャリ | 酢飯(すし飯)。ひと口大に握ったご飯 |
| ネタ | シャリの上にのせる魚介など。「タネ(種)」を逆さに読んだ言葉 |
| 貫(かん) | 握りを数える単位。「1貫、2貫」と数えます |
| ガリ | 甘酢に漬けた薄切りのしょうが。口直しに |
| 軍艦巻き | シャリの周りを海苔で囲み、上にネタをのせた寿司 |
「ガリ」や、お茶の「アガリ」、お会計の「おあいそ」は、もともとお店の人どうしの言葉です。お客さんは「しょうが」「お茶」「お会計」と言えば十分です。
寿司のかたち
いま私たちが「お寿司」と聞いて思い浮かべる握り寿司は、江戸時代の後半、文政年間(1800年代初め)に江戸で広まった「江戸前寿司」がルーツです。屋台でお客さんの目の前で握り、すぐ食べてもらうスタイルが人気を集めました。冷蔵庫のない時代だったので、魚を酢や塩で締める、煮る、醤油に漬けるといった「仕事」で、おいしさと日持ちを両立させたのが江戸前の知恵です。
覚えておきたい寿司の4つのかたち
このほか、ご飯の上に刺身などを散らした「ちらし寿司」や、関西の「押し寿司」もあります
定番・人気ネタ一覧
まずは全体像から。回転寿司の利用者3,000人に「よく食べるネタ」を聞いた2026年の調査では、サーモンが15年連続の1位でした。
| 順位 | ネタ | よく食べる人の割合 |
|---|---|---|
| 1 | サーモン | 47.7% |
| 2 | マグロ(赤身) | 36.4% |
| 3 | エビ | 27.8% |
| 4 | マグロ(中トロ) | 27.4% |
| 5 | ハマチ・ブリ | 27.2% |
マルハニチロ「回転寿司に関する消費者実態調査 2026」(月1回以上回転寿司を利用する15〜59歳の3,000人、複数回答)。
この記事で紹介する定番ネタを、グループごとに一覧にしました。「はじめての人に」の◎は、生魚に慣れていない人でも食べやすいネタです。
| グループ | ネタ | 味わい | はじめての人に |
|---|---|---|---|
| マグロ | 赤身 | さっぱりした旨み | ◎ |
| 中トロ・大トロ | 脂がとろける | ◎ | |
| サーモンなど | サーモン | まろやかな脂 | ◎ |
| ハマチ・ブリ | 脂ののった青魚 | ○ | |
| 白身 | タイ・ヒラメ・シマアジ | 上品で淡泊 | ○ |
| 光り物 | コハダ・アジ・サバ | 酢締めの旨み、青魚の香り | △(慣れたら) |
| 貝類 | ホタテ | やわらかく甘い | ◎ |
| 赤貝 | 磯の香りと歯ごたえ | ○ | |
| 軍艦巻き | ウニ・イクラ | 濃厚な甘み、ぷちぷち | ○ |
| そのほか | エビ・イカ | 甘み、ねっとり | ◎ |
| 穴子・玉子 | 甘いタレ、甘い玉子焼き | ◎(火が通っている) | |
| 鉄火巻き・かっぱ巻き | マグロ、きゅうりの細巻き | ◎ |
マグロ ── 赤身・中トロ・大トロ
寿司の主役といえばマグロ。同じ一匹でも、とる場所によって味がまったく違うのがマグロのおもしろさです。
マグロの部位と味のちがい(模式図)
部位の境目は目安です。マグロの種類や大きさ、店によって切り分け方は変わります
赤身 ── マグロの旨みをまっすぐ味わう
体の中心から背にかけての、きれいな赤色の部分。脂が少なく、さっぱりとした旨みと香りが楽しめます。実は江戸時代、マグロは傷みやすい「下魚(げざかな)」とされ、寿司には主に醤油に漬けた赤身の「ヅケ」が使われていました。
中トロ・大トロ ── とろける脂
中トロは、赤身の旨みと脂がほどよく合わさった部位。お腹の後ろの方や、背の皮に近いところからとれます。大トロは、お腹の頭に近い部分。白い脂の筋がたっぷり入り、口に入れると体温でとろけるような甘さです。トロが広く食べられるようになったのは、ここ50年ほどのこと。いまでは寿司屋の花形です。
迷ったら赤身 → 中トロ → 大トロの順に食べ比べてみてください。脂の量が少しずつ増えていく違いが、はっきり分かります。
サーモンとハマチ
サーモン ── 回転寿司の人気ナンバーワン
オレンジ色の身に、白い脂の縞。まろやかでクセがなく、子どもから大人まで大人気のネタです。実は、日本で生のサーモンを寿司で食べるようになったのは、意外と最近。1980年代にノルウェーが「プロジェクト・ジャパン」として養殖サーモンを日本に売り込み、生で食べられるサーモンが広まりました。それまでの日本の鮭は、焼いたり塩漬けにしたりして火を通して食べる魚だったのです。
ハマチ・ブリ ── 脂ののった青魚
ハマチとブリは同じ魚。成長するにつれて名前が変わる「出世魚」で、大きく育ったものがブリと呼ばれます。とろりとした脂とほどよい弾力があり、特に冬の寒ブリは格別です。
白身 ── 上品な一貫目に
透き通るような白い身の魚は、淡泊で上品な味わい。味が繊細なので、最初の一貫にぴったりです。
- タイ(鯛) ── 白身の代表。ほんのりとした甘みと、しっかりした歯ごたえ
- ヒラメ ── 淡泊でもちっとした身。ひれのつけ根のエンガワは、脂がのってコリコリとした食感
- シマアジ ── 透き通る身に上品な脂。白身と青魚のいいところを合わせたような味
白身は、塩とすだちで出してくれる店もあります。そのときは醤油をつけずに、そのまま味わいましょう。
光り物 ── 江戸前寿司の心意気
銀色に光る皮をもつコハダ、アジ、サバ、イワシなどを、寿司の世界では「光り物」と呼びます。青魚の旨みがぎゅっと詰まっていて、酢で締めることで、さわやかな酸味と甘みのバランスが生まれます。
中でもコハダは、江戸前寿司を代表するネタ。コノシロという魚の若いもので、傷みやすいため酢で締めて食べる方法が生まれました。身がやわらかく小骨が多いので、職人の腕が問われる一貫。「コハダは江戸前の寿司屋の心」ともいわれます。
アジは、生のまま、しょうがやねぎをのせて出されることが多いネタ。脂ののった身とさわやかな香りが楽しめます。サバは酢で締めた「しめさば」で。光り物は、少し慣れてから挑戦すると、寿司の奥深さに気づけるはずです。
貝類 ── 甘みと歯ごたえ
ホタテは、ふっくらとやわらかく、かむほどに甘みが広がる貝。クセがないので、生魚が苦手な人にもおすすめです。
赤貝は、その名のとおり鮮やかな赤色が目を引く、江戸前の代表的な貝。磯の香りと、コリッとした歯ごたえが魅力です。このほか、ホッキ貝、つぶ貝、ミル貝なども、それぞれ違った食感が楽しめます。
ウニ・イクラと軍艦巻き
やわらかくて握れないウニやイクラを、どうやって寿司にするか。その答えが、シャリの周りを海苔で囲んだ軍艦巻きです。銀座の名店「久兵衛」の初代が考えたといわれ、横から見た形が軍艦に似ていることから、この名前がつきました。
ウニ ── とろける甘さと磯の香り
口に入れると、とろりと溶けて甘みが広がり、磯の香りが鼻に抜けます。オレンジ色の濃いバフンウニ、淡い黄色のムラサキウニなど、種類によって色も味わいも違います。
イクラ ── ぷちっとはじける宝石
サケの卵を一粒ずつほぐし、醤油などに漬けたもの。名前はロシア語で魚の卵を意味する言葉から来ています。噛むとぷちっとはじけて、旨みがあふれ出します。見た目の華やかさも、旅の写真映えも抜群です。
エビ・イカ・穴子・玉子・巻物
生魚に自信がなくても大丈夫。火を通したネタや、食べやすいネタもたくさんあります。
エビ
江戸前の定番は、茹でた車エビ。赤と白の縞模様が美しく、ぷりっとした食感と甘みが楽しめます。生の甘エビは、とろりとした甘さが魅力です。
イカ
白く透き通るイカは、ねっとりとした甘みが持ち味。中でもアオリイカは「イカの王様」とも呼ばれます。食べやすいように、表面に細かい包丁目を入れて出す店も多いです。
穴子
やわらかく煮た穴子に、煮汁を煮詰めた甘いタレ「ツメ」を塗った一貫。ふわっとほどける身と、甘じょっぱいタレがたまりません。タレが塗ってあるので、醤油はつけずにそのまま食べましょう。
玉子
甘い厚焼き玉子は、子どもにも人気のネタ。店ごとに味も焼き方も違い、「玉子を食べればその店の腕が分かる」ともいわれます。コースの締めに出てくることも多い、デザートのような一品です。
巻物
マグロの赤身を巻いた鉄火巻き、きゅうりのかっぱ巻き、マグロのたたきにねぎを合わせたネギトロ巻きが定番。食事の最後に、さっぱりと締めるのにもぴったりです。
食べる順番の目安
お寿司に「必ずこの順番で」という決まりはありません。それでも、あっさりしたネタから、脂ののったネタや味の濃いネタへと進むと、それぞれの繊細な味を最後まで楽しめます。
あっさりから、こってりへ
あくまで目安です。好きなネタを好きなだけ頼むのが、いちばんのごちそうです
大トロのあとに白身を食べると、白身の繊細な味が脂に負けてしまいます。味が変わる前にガリをひと切れ。口の中がリセットされて、次の一貫がまたおいしく感じられます。
食べ方のコツ
はじめての人がいちばん迷うのが、醤油のつけ方と、手か箸かという問題。答えはシンプルです。
握りと軍艦巻きの食べ方
- 手でも箸でもOK ── 握りは手で食べてもマナー違反ではありません。手で食べるときは、おしぼりで指をきれいに。ナイフやフォークは使いません
- 醤油はネタに少しだけ ── シャリにつけると醤油を吸いすぎ、崩れてしまいます。握りを返して、ネタの端を軽くつけましょう
- ひと口で ── 握りは、ひと口で食べられる大きさに作られています。かじって皿に戻すのは避けましょう
- わさびは足さなくていい ── 握りには、ネタとシャリの間にすでにわさびが入っています。苦手なら「さび抜き」で頼めます
- タレや塩のネタはそのまま ── 穴子(ツメ)や、店で醤油(煮切り)を塗ってあるネタは、醤油をつけずに
- 軍艦巻きはガリで ── 倒すとネタがこぼれるので、ガリに醤油をつけて上から塗るのがスマート
お店でのマナーと回転寿司
カウンターのお寿司屋さんで
- 出されたら、すぐに食べる ── カウンターでは1貫ずつ出てきます。握りたてがいちばんおいしい瞬間です
- 「おまかせ」と「お好み」 ── おまかせは職人がその日のおすすめを順に出してくれるコース。お好みは自分で1貫ずつ頼むスタイル。はじめてなら、おまかせが安心です
- 香水は控えめに ── 強い香りは、繊細なネタの香りを消してしまいます
- 写真は一言かけてから ── 撮影の可否は店によって違います
回転寿司で
気軽に楽しめる回転寿司は、旅行者にもおすすめ。最近はタッチパネルで注文すると、専用のレーンで席まで届けてくれる店がほとんどです。
- 一度取ったお皿はレーンに戻さない ── 食べないものは取らないのが基本
- 食べ終わったお皿は重ねておく ── お皿の色や枚数でお会計を計算します(回収口に入れる店もあります)
- ガリ・お茶・醤油はセルフ ── 席の近くに用意されています。粉末のお茶にお湯を注ぐ店が多いです
結 — 一枚まとめ
- 握り寿司のルーツは江戸時代の江戸前寿司。かたちは握り・軍艦巻き・細巻き・手巻きを覚えておけばOK。
- 人気ナンバーワンはサーモン。マグロは赤身 → 中トロ → 大トロで脂の違いを食べ比べ。
- 白身は上品、光り物は江戸前の心意気、貝は甘みと歯ごたえ、ウニ・イクラは軍艦巻きで。
- 食べる順番の目安はあっさり → こってり → 甘い締め。合間にガリで口直し。
- 手でも箸でもOK、醤油はネタに少しだけ、ひと口で。軍艦巻きはガリで醤油を塗る。
参考
- @DIME ── マルハニチロ「回転寿司に関する消費者実態調査 2026」
- nippon.com ── 回転寿司で人気のネタ(2026年)
- nippon.com ── 江戸前寿司の歴史と「仕事」
- 旅行読売 ── 江戸前寿司の代表的なネタ(コハダ・アナゴ・マグロ)
- FUN! JAPAN ── マグロの部位
- ノルウェー水産物審議会 ── サーモン寿司誕生40周年
- Sushi-pedia ── Hikarimono(光り物)
- テレビ東京「アド街ック天国」 ── 銀座 久兵衛
- TKG 和英学習辞典 ── 軍艦巻き
- LIVE JAPAN ── 寿司の食べ方
- 和樂web ── 和食のマナー(握りずしは手で食べてもOK)
- Kanpai ── Sushi etiquette
人気ネタの順位は2026年の調査によります。ネタの旬や扱いは産地・店によって異なります。写真は Wikimedia Commons で再利用が認められているもので、撮影者とライセンスは各写真の下に記しました。図とイラストは筆者が作成しました。
グルメノート No.2 — はじめてのお寿司 / 2026.10